Vol.4 微妙な関係

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促されるままに入った玄関先で、俺の思考は停止した。 「だから近いって言ったでしょ?」 ど、どう言う…事だ?! 奈央は、俺が持っていた車のキーを、指でちょこんと揺らす。 「車、出したくても出せないね」 そう言うと奈央は、俺の足元にスリッパを置いた。 確かに車を出す距離じゃない。 奈央の言う通り、車を出したくても出せる距離じゃない。 此処は公道じゃない。 標識もない。 車は走っちゃ行けない。 いや、此処に持って来ることすら出来ない……建物内だし。 何せお隣なんだから。 「いつまでそこに突っ立ってる気?」 「いてっ!」 耳を引っ張られ、その痛みでやっと俺の頭は動き出した。 「奈央……お前……隣に住んでたの?」 「うん、残念ながら。ほら、いいからさっさと上がってよ」 残念ってどういう事だよ! そう突っ込む事を忘れ、『あーぁ、ばれちゃった』と、ぼやきながら歩く奈央に続き、部屋の中へと足を進めた。 「シャワー浴びてくるから、適当に座ってて」 リビングに一人取り残される俺。 辺りを見回すと、部屋全体が白を基調に纏められている。 リビングの端には、小さな白いデスクがあって、その上には数冊の参考書が置いてあった。 他にも部屋があるはずなのに、此処であいつは勉強しているのか? ゴチャゴチャしたものは何もなく、中央にある大理石のテーブルだけが存在感をアピールしている。 それを挟んで置いてあるソファーだけが、この部屋で唯一、キャメルの色を持っていた。 随分とシンプルな部屋だ。 これが女子高生の部屋だとは思えない。 でも物は良い。 このマンションで、しかも最上階に住んでるってだけで、アイツが良家のお嬢様なんだろうと窺わせる。 此処は高級マンションとして有名で、セキュリティーも万全だ。 女の一人暮らしには、持って来いの条件ではあるが……。 にしてもだ! 何でよりによってアイツが隣に住んでんだよ!
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