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「素行が悪いのは敬介でしょ。マンション前で女性とキスしてたり、バーでは見る度に相手が違うし。あそこのバーね、私も行きつけなの」
バレてたのは……俺の方か!?
そう言えば、部屋に入ると言って聞かない女を黙らせるのに、マンション前で口を塞いだことがあったような……。
うっ、見られてたのかよ…。
しかも、バーでも何度も見掛けられていたとは……。
「ガキのくせに、あんな店に出入りすんな! っつうか、何で未成年の家にビールが置いてあんだっ!」
「見られてたからって、動揺して怒んないでくれる? ばれるようなヘマをする敬介が悪い。実際、私は今まで敬介にばれなかった訳だし」
何で気付かなかったんだ、俺。
マンションでもバーでも、コイツの気配すら感じなかったぞ?
まさか隣に住んでるなんて想定外もいいところだもんな。
それに隣とは言っても、防音もしっかりしてるこのマンションでは、物音一つ届かない。
静かなこのマンションに、奈央が住んでたなんて分かるはずねぇよ。
でも…。
「こんな広い部屋に一人なんて、お前寂しくねぇの?」
「……別に。そう言う敬介だって一人じゃん」
「俺は男だから寂しくなん───」
「敬介、お替りは? お替りしてよ、ね?」
俺の言葉に被せて話す奈央は、空になった皿を見て、あっさりと話題をすり替えた。
『……それにしてもよぉ』
空になった俺の皿を取り、立ち上がろうとした奈央を手で制し、自分でよそりに来たキッチンで、思わず溜息混じりに漏れ出た独り言。
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