Vol.4 微妙な関係

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2杯目のカレーをよそり、奈央の元へ戻ると 「沢山食べてね」 そう言う時だけ、可愛らしい顔で笑いかけてくる。 「奈央、聞いてもいいか?」 「何?」 「今夜、俺以外に客でも呼んでんのか?」 「誰も来ないけど? 私、人呼ぶの嫌いだし」 「そうか……。じゃあ、何でだろうな。あの、量は……」 「……何でだろうね」 「カレー、10人前はありそうだよな?」 「かもね」 「どうすんだ、アレ?」 「えへへ」 えへへ、ってお前……。 そんなキャラじゃないだろ! いつもは綺麗な顔立ちが、スッピンの今日は、ほんの少しだけ幼く見えて……。 それ以上、んな顔すんな! くそっ! 迂闊にも、可愛いと思っちまったじゃねぇか! そんな思いを誤魔化すように、目の前の小悪魔を睨み見る。 「可愛く言っても、俺はあんなに喰えねーぞ」 「ちっ」 てめ! 舌打ちかよ! やっぱりな、お前はそう言う奴だよ。 一瞬でも可愛いと思った俺がバカだった。 「作りすぎなんだよっ!」 「いっぱい作った方が美味しく出来るの!」 「限度があんだろうがっ!」 「作っちゃったんだからしょうがないでしょ。責任とって食べてよね」 俺は家畜じゃない。 だいたい、俺が責任取らされる事もないんじゃねーか? 当然、一晩で食べきれる筈もなく、俺達二人は3日3晩かけて、何とかこの量を喰い切った。 これを機に、お互いの部屋を行き来するようになった俺達。 学校では教師と生徒。 家に戻れば普通の隣人関係とは微妙に違う、2人の奇妙な関係が始った。
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