4710人が本棚に入れています
本棚に追加
/629ページ
今日から学期末のテストが始る。
朝のSHR。
生徒は誰しも落ち着きをなくしている。
試験が始るギリギリまで、参考書を見たり、小声で友人と確かめ合ったり、最終確認を怠らない。
そんな光景が当たり前の中で、窓際に座る奈央だけは机の上にペンケースだけを置いて、外を眺めていた。
ジタバタする気はないらしい。
でも本当に大丈夫か?
週末、殆ど勉強も出来ずにいたアイツが、今回トップを守りぬけんのか?
…って、そんな事はどうでもいいんだ。
奈央の体調だけが気がかりだ。
熱は下がったか?
昨夜、食事を済ますと、もう勉強はしないで寝ろよ! と、何度も言う俺に、心底嫌そうな顔をして『敬介がこんな口煩いとは思わなかった』と、煙たがられた。
俺だって、そう思うよ。
本来、他人に興味が持てない人間なんだから。
それが何故だ。
奈央の色んな面を見たからだろうか。
人は、いくつもの顔を持っているのだろうか。
俺もそうだし、奈央もそうであるように、此処にいる他の生徒達も、何かを抱え違う一面を隠し持っているのかもしれない。
ふと、教師になって初めて、そんな思いが頭を過り、視界の端に奈央の姿を置きながら、ざっと教室内を見渡した。
見渡した教室内はやはり同じで、どいつもこいつも直前に迫るテストで頭が一杯の様子…
と、思っていたが、一人の女子生徒の様子に、俺の視線は一時停止した。
最初のコメントを投稿しよう!