Vol.5 二人の関係

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今日から学期末のテストが始る。 朝のSHR。 生徒は誰しも落ち着きをなくしている。 試験が始るギリギリまで、参考書を見たり、小声で友人と確かめ合ったり、最終確認を怠らない。 そんな光景が当たり前の中で、窓際に座る奈央だけは机の上にペンケースだけを置いて、外を眺めていた。 ジタバタする気はないらしい。 でも本当に大丈夫か? 週末、殆ど勉強も出来ずにいたアイツが、今回トップを守りぬけんのか? …って、そんな事はどうでもいいんだ。 奈央の体調だけが気がかりだ。 熱は下がったか? 昨夜、食事を済ますと、もう勉強はしないで寝ろよ! と、何度も言う俺に、心底嫌そうな顔をして『敬介がこんな口煩いとは思わなかった』と、煙たがられた。 俺だって、そう思うよ。 本来、他人に興味が持てない人間なんだから。 それが何故だ。 奈央の色んな面を見たからだろうか。 人は、いくつもの顔を持っているのだろうか。 俺もそうだし、奈央もそうであるように、此処にいる他の生徒達も、何かを抱え違う一面を隠し持っているのかもしれない。 ふと、教師になって初めて、そんな思いが頭を過り、視界の端に奈央の姿を置きながら、ざっと教室内を見渡した。 見渡した教室内はやはり同じで、どいつもこいつも直前に迫るテストで頭が一杯の様子… と、思っていたが、一人の女子生徒の様子に、俺の視線は一時停止した。
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