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たっくんは
金曜日の晩 夫の実家泊まりにいく
寂しい思いをさせないようにと
たっくんが夫が亡くなってから
自発的にしている事だ
私は暫く顔を出してない
一度 酷い事をいわれた
『さゆみさん あんたが変わりに死ねば良かったのよ』
忘れられない
夫を亡くした その日にいわれた たった 一言
息子を亡くして辛いのはわかるでも 私だって 夫を亡くして悲しいのに
たっくんは その時は私をかばってくれた
でも 今はどうだろう
あの頃のように 私をかばってくれるだろうか?
そう思うと 彼が恋しくなった
いつものように 近所にあるコンビニで 500の発泡酒を二本とつまみに おでんを買って帰る途中 彼にあった
『こんばんは』
今度は 私から 声をかけた
『こんばんは 今日は一人ですよね』
『そうよ また来る?』
『いいんですか?』
『いいわよ 一人で寂しいから あなたに会いたかったの』
私は また彼を家へあげた
また どちらからとなく唇を重ね お互いを愛撫しあった
夢のような時間
私が唯一満たされる時間
彼が 耳元で囁く
『名前聞いていいですか?』
『さゆみよ さゆみ さゆみって呼んで』
『俺は 竜也 さゆみ感じるかい?』
『ええ 感じるわ 竜也』
私たちは絡み合い愛撫しあった
一つになって お互いを激しく求め続いた
束の間の幸せを味わえば味わう程
寂しさはましていった
『ねぇ 竜也 今度は何時会えるの?』
『気づいてないの? さゆみが会いたいと思った時に 俺は現れる』
『わかったわ 竜也 寂しいけど我慢するわ 』
私は竜也を 見送った
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