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「ふむ、では俺も失礼するとしよう。総司、稽古も忘れるんじゃないぞ」
柔らかな笑みを浮かべた近藤は沖田と一縷の頭を撫でると芹沢に頭を下げ部屋を出る。
斎藤も戻ろうと立ち上がろうとするとその裾をぎゅっと掴む者がいた。
斎藤が下を見ると其処に居たのは案の定と言うべきか、一縷である。
斎藤はぼーっと一縷を見る。
一縷も斎藤をじっと見上げた。
やがて一縷と目線が合うまでしゃがんだ斎藤は一縷を軽々と持ち上げる。
「にぃに、すき」
にへらと笑みを浮かべた一縷に其れを見ていた蓮が頭を擡げた。
《よく一縷の言いたい事が分かったな》
「どういう事です?」
其れを聞いた沖田が訳が分からないというように蓮を見た。
「抱っこしてほしい、って目で訴えてたんだよ。あいつ」
「ああ、一くんは人の表情を読み取るの上手いですからね。普段何考えてるのかよく分からないですけど」
納得した沖田と芹沢は一縷の方を見やる。
斎藤に抱き上げられ嬉しそうに笑う一縷。
その微笑ましい光景に部屋にいる者は一様に和んだ。
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