新風

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「女の子みたいな新人くん入ったんだね。」 大して興味も無さげに、雑誌をめくりながら海里が声をかけてきた。 海里はちょくちょく私のバイト先に遊びにくる。 あれ、いつ来たのかな‥ 料理をする手が止まった。 「ああっ、見たの? 先週から入ったよ。」 海里は私の周りの男関係を過敏に気にする。 ‥彼女にしてくれないくせに。 ほんとに、ずるいなあ。 でも、そんな意味不明な束縛でさえも、少しだけ嬉しいと感じてしまうのが私の悪いところだ。 心を鬼にして、怒ったような表情を作った。 「きてたんなら声をかけてくれればよかったのに‥」 トンっとテーブルに牛丼をおきながら抗議の目をむける。 「なんだよ。」 「‥別に。」 箸をとりにいこうと背中をむけると腕を捕まれ床に抱き込まれる。 「別にとゆーわりには、口がとがってんだよ。」 唐突にくすぐられ始める。 「ぎゃーっ!」 「生意気だぞ、お仕置きだ!」 ひとしきりこちょぶられ何故か必死に謝ってやっと解放される。 箸をとりに立ち上がり、海里がお茶をいれる。 二人で他愛のない話をしながらご飯をたべる。 こんな近くにいられる幸せ。 近くにいるからこそ欲がでてくる。 私は海里を独り占めしたい。 抱きしめてキスして欲しい。 友達じゃ、もう嫌なんだ。 そろそろこの微妙な関係を終わらしたい。
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