新風

8/32
前へ
/217ページ
次へ
「海里‥私やっぱり海里が好き。」 またか、という顔で海里は私を見る。 「分かってるよ、葵の気持ちは。でもいつも言ってるだろ? お前は俺のことなんて好きじゃないよ。」 「違うよ!こんなに私は高校の頃から海里しか見てないじゃない! こんなに毎日会うのは、私が海里を好きだからだよ? 海里は私と、本当に友達のつもりで会ってるの?」 だめだ‥ またいつもの繰り返しだ。 こんなんじゃ、前に進めない‥ 「・・・もう、会わない方がよくない?」 爆弾を落とした。 半分本気。 ・・でも本当に会わない方がいいなんて、思っていない。 そんな私の気持ちを見透かすように、穏やかな瞳で海里は私の瞳を覗き込んだ。 「‥本気でいってんの?」 「だってつらいよ!こんなに一緒にいるのに、好きって言ってるのに。 ‥もう5年もこのままじゃない。 彼女にしてくれないなら、もう・・。」 「お前の気持ちってその程度なの?そうやって会わないって決めて終わりにできる?」 ・・多分、無理。 どうせ、また、私から海里に会いたいってすりよるだろう。 海里の特別になれなくても、側にいるだけで・・って、また繰り返してしまうかもしれない。 だって、私にはもう、海里しかいない。 黙ってる私に海里は、よしよしと 頭を撫でる。 私の必死な決意が小さくなっていく。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

621人が本棚に入れています
本棚に追加