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「手掛かりというと……意識がなくなる前のこととか?」
「そうだ。何もないのにこんな所にいるわけがない。なら、意識がなくなる前に何かあったはずだ」
「なるほど確かに。じゃあ、それを思い出せばいいのか」
「うむ。絶対とまではいかなくとも何かしらの繋がりは見えてくるはずだ」
「分かった。えーと……何してたっけな……」
男は腕を組むと、意識がなくなる前に何があったのか記憶を遡る。
そんな男の頭にぼんやりと浮かんできたのは、雨の降る暗い空と、血塗れで倒れる何人もの兵士達の姿だった。
聞こえてくるのは雨の音だけ。臭ってくるのは鉄の臭いと肉の焼け焦げた臭い。
そこに動くものはなく、そこに存在するのは『死』のみだった。
その記憶から、男は理解した。
「……あぁ、そうか……そういえば俺は――」
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