おまえが一番危ないよ。

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 世の中には危険がいっぱいある。あふれている。なかでも恐ろしいのはお化け、ヤクザ、噂話、戦争、歩き煙草、サイコ、人殺し、ぼったくりバー、泥棒、地震、雷、火事、親爺(この親爺というのも得体が知れず、ある諜報機関によれば一国が人工的に開発している凶暴な生き物を便宜的に「親爺」と呼んでいるのであるらしい……)、等々、挙げたらキリがないのであるが、そのくらい、我々の身はいろいろな危機にさらされている。そういった事実をわたくしは、この45年間の経験から学び、頑張って頑張って研究してきた。その末に編み出した独自の危機管理スキルを、今日は皆さまにお教えしたいと思う。それにしても長かった。あかんやった。この危機管理研究に費やした45年のあいだに妻が逃げた。息子が非行に走った。家が燃えた。破産した。ああ、いろんなことがあったなあ。もう私の味方はポチだけだ。この豆柴は妻が怒り狂って皿をげしゃげしゃにしたときも、私が日頃の行いを息子に注意したところキレて顔面を殴打したきたときも、業者の使いが夜中「いるんですよねえ、いるんですよねえ、」とドスの効いた声で取り立てて来たときも、ずっとくうぅと鳴いてそばにいてくれたのだ。可愛い。いとしいよ。ああ、俺が死んだら財産配分はすべてお前にやるつもりだ。そうだ、そうだ、お前の大好きなジャーキーでうんと大きなお城を死ぬ前に作るつもりだ。って、痛い!痛い!噛むな!ああ!ポチ!どうしたんだ!ああ!この狂犬!犬畜生めが!  申し訳ない。本題がそれた。まず、このわたくしが発見したみーんなが全然気がつかない危険、恐怖、これをお教えしたいと思う。  これだ。  風呂上がり。特に銭湯。あなたは湯に浸かってのぼせているだろう。頭がクラクラしている。何故か。それは人間の体内の主要な構成要素である水分が、熱い湯に、この危険極まりない熱い湯に浸かったことによる体内の新陳代謝の活発で発汗したからだ!危ない!脳の水分もこれ当然失われている訳だから、あなたの注意力は散漫である。するとどうなるか。足下がおぼついて転倒、死に至る。本当に危険だ。
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