此処は古本屋

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巻末の方を見ると、初版と書いてあり発行は今から四十年くらい前だ。 僕はこの本が気に入ったので買う事にした。 カウンターに向かうと、本を読んでいた男性がチラッと僕を見て 「やぁ、いらっしゃい」 と、寝起きの様な低いテンションで言った。本を読んで疲れたのか、はたまた最初からこうなのかは解らないが、第一印象は元気が無かった。 「あの、これ買います」 僕がカウンターに本を置くと、その男性は本をみて少しだけにやけた。 「やっと売れたか、一体何年間此処にいたのか」 男性は、本を手にとって挟まっていた値札を外した。 「はい、大事にな」 僕は料金の九百円を払って本を受け取った。 そして、男性はまた本を読み始める。 ここでちょっとした疑問が浮かんだ、さっきなんで看板にあの文字を付け足したのだろうか?僕は聞いてみる事にした。 「あの、さっきどうして『年中無休』の看板に『土日は休みます』と、付け足したのですか?」 男性は数秒の間を空けこういった。 「知りたいかい?いいだろう教えてあげる。実はね、この街にもうそろそろ大きな本屋が出来るんだ。まぁ、それは別として」
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