はんこうよこく、そのに

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はんこうよこく、そのに

 窓ガラスがガタガタと身震いした。  窓ガラスは生きていないので、実際には振動していると表現したほうが正しい。  これが黒板に書かれている擬人法というやつか…。  天気予報では雨となっていたが、凄い勢いで雲が流れている。 「雨降るんだよね?ど~しよう。」 「天気予報通りならね。通り雨かもよ。」  隣の席から声が聞こえたので返事をする。彼女は傘がないので雨が降ると困るらしい。僕の知るところではない。 「残り2分」  後ろの席では10分前からカウントダウンが始まっていた。  そんなに授業が嫌なら学校など来なければいいのに。  と、いう僕も授業からの解放を待ちわびている。スカートは僕の趣味じゃない。 「残り1分」  シャーペンと消しゴムを筆箱へ詰め込んでノートを閉じる。今日の授業はこれで最後。後はSTを終えるだけだ。  相変わらず震えている窓ガラスを眺めた。スーパーの袋が飛んでいる。  そして1人の少女と目が合った。  ぐりぐりした大きな瞳、風に翻る長い髪、サーチライトと衛星を足したような物体、スカートとしましま。  無邪気な笑顔で手を振っている。おもわず手を振り返してから気づいた。ここ3階…。  手にはマイク。サーチライト型衛星(たぶん違う)からコードが伸びている。  大きく開けた口から増幅された「あーあー、テス、テス」という声が響いた。いよいよ窓ガラスが割れそうだ。 「ねえ、これ開けていい?」  何のことかさっぱりわからないがとりあえず頷いてみる。  窓が開くと風が教室中を駆け巡る。女子たちの絶叫もついでに駆け巡る。願わずしてフラグが立った。  風と共に入ってきた少女は、僕の頭を両手で固定すると自分の頭を真っ直ぐ降ろした。  激突。額に鈍い痛み。そして柔らかな感触。 「私が初めてかしら?お見知りおきを」 「はい?」 としか、答えられない。
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