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はんこうよこく、そのにのつづき
僕の頭脳では現状を理解することは不可能だった。
目の前の少女は誰なのか、額に感じた感触はなんなのか、そもそもこれは現実なのか、そしてこのサーチライト型衛星はサーチライト型衛星なのか。
「あれ、どうしたの?ほうけちゃって。きゃぱおーばー?」
ガクガクと肩を揺さぶられて意識が戻った。雨が痛いし風も冷たい。夢ではないようだ。
「あ、名前まだだったね。私はメロウ。君は誰?」
君は誰?僕が誰かも知らずにこんなことをしているのだろうか…。
「僕は…」
「待って、私が決めてあげる!
君は…アニマ!私のアニマだから、アニマ!!」
1人満足げに頷いているが、こちらは意味不明だ。
「アニマってなに?動物のこと?」
「アニマはね、全ての生き物に宿る力。だから私にはないの。」
「全ての生き物に宿るのなら君にもあるはずじゃないの?」
「アニマは優しいね。でもね。私にはないの。私はアレだから。」
メロウの指差した先は空。なにかいるのだろうか?
「鳥?」
「違う…。もっと大きくて強いの。」
鳥より大きくて強い…もっとわからない。
「ねえ、そのアニマってどこにあるの。」
すると少女…じゃなかった。メロウは僕の薄い胸に手をかざした。
「ここ。音が聞こえるところ。」
それを見ていた女子が声を張り上げる。
「もしかして、アニマって命のことじゃないの?」
命。生物の生きてゆく原動力。では、メロウは死んでいるのだろうか。
「私はお化けじゃないよ。私はアレ。」
また空を指し示した。そこには流れる雲以外何もない。
「風…台風とか?」
沈んでいたメロウの表情が瞬時に晴れた。
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