はんこうよこく、そのにのつづきのに

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はんこうよこく、そのにのつづきのに

 その後も主語の抜け落ちた会話を続けて幾つかのことがわかった。  1、アニマは命で決定。  2、メロウは台風。風神のようなもの。  3、頭のつむじは左回り。台風だからだと思う。  4、僕がメロウのアニマ。これがわからない。  メロウの話によると、生まれたばかりのメロウは旋風だったらしい。  森で暮らしていたが、流れているうちに海に出てしまった。  周りの風を飲み込んでいくうちに巨大化。  低気圧の塊となって海を漂っていると、自分の意志とは関係なく流されてしまう。  そして僕のもとへ辿り着き、現在に至る。  妖怪に詳しい先生の見解だと、大きくなりすぎた力を制御するため、宿り主を探しに来たらしい。  それが僕。僕が宿り主となってあげなければ、メロウは暴走する…というかすでにしている。  ただ、問題がある。どうすれば宿り主になれるのか、だ。 「やっぱりキス!?」 「誓いの儀式でしょ。」 「一夜をともに過ごすとか…。」 「僕は女だ!!」  みんな面白がってマジメに考えてくれない。 「それにキスならさっきされた。」 「口と口じゃない?マウス・トゥ・マウス。」 「く、口と口なんて…。」 「いいじゃん。女の子どうしだし。」  完全に遊ばれている。別にメロウとのキスが嫌なワケじゃない。  この雰囲気とクラスどころか隣の学級まで集まった状況がアリエナイだけだ。 「アニマ、こっち向いて。」 「え?」  不意に呼ばれて振り向いてしまった。ふかく。  沸き上がる歓声というか絶叫。拍手喝采に無駄な口笛。悪のりのアンコール。  全身に怒りを込めて睨んでみたが威力ゼロ。 「イヤだった…?」  メロウだけが真剣に僕を見つめてくれる。 「うーうん。大丈夫。」  今度は僕から唇に触れてみる。ほんの少しして離脱。  メロウの横顔が夕日で輝いて見えた。
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