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(綺麗な顔してんのに…こんなに汚れてたらもったいない)
「ん…」
「!」
寝顔を見ていたらそいつの瞼がぴくりと動いて、ガン見していたのがバレたのかと思った。
(もちろん、そんな訳はないけど)
「ぁ…?」
「お、気がついた」
ゆっくりと開かれた瞳は、焦点が合わないらしく視点が宙をさまよっている。ただでさえ混乱してるだろうそいつを落ち着かせてやるために、俺は口元と声で作った微笑みで、人当たりの良い人間ってやつを演じながら接した。
「はい、眼鏡。壊れてたけど」
「あ…ありがとうございます」
こいつが掛けていた黒縁の眼鏡は、恐らく倒れた衝撃か何かでフレームが歪んでしまっていた。それでもないよりはましなんだろう、そいつは上半身を起こすと少し迷ってからそれを掛けたが、右側が斜めにずり落ちててちょっと笑える。
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