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「あの、僕は…」
「俺の部屋の前で倒れてたんだよ」
「え」
「覚えてない?」
「すみません…全然」
言うとそいつはおもむろに布団をはがし、ベッドから下り始めた。
「動いて大丈夫?」
「はい」
「なんか食べる?」
「いえ、大丈夫です。お世話になりました」
ぺこっとお辞儀をして玄関に向かう。礼儀正しい奴だな。
その礼儀正しさと、ほつれたジャージから出ている白い糸のだらしなさがアンバランスで、やっぱり笑えた。
(あれ…そういえばこいつどうやって帰るんだ?)
荷物は持ってないみたいだし、ジャージのポケットにも財布や定期が入っている気配はなかった。
…まさか。
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