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「もしかして…家出?」
「っ!」
靴紐を結ぶ手がびくりと動いて止まる。おいおい、本気かよ。
「どこ行くつもり」
「適当に野宿します」
「駄目だよ、風邪ひく」
「貴方には関係ありません」
そのまま出て行こうとするから、俺は思わずそいつの腕を掴んで引き止めていた。
「…どうして構うんですか」
「んー、先生だからかな」
「先生…?」
「そ、高校の化学のセンセ。だからこういうの、見過ごす訳にもいかないんだよ。立場上ね」
暗い玄関でも、そいつの目が見開かれたのがよく分かった。
こんなユルい奴が教師だなんて、とか思ってんだろう。そんなのは承知で教師やってんだよ馬鹿め。
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