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反省文を書き終えて鬼瓦に手渡すと、すんなりと生徒指導室から出してくれた。
やっぱり、今日は何かあるのかな……? 鬼瓦も妙にニヤついてたし……教室に行けば解るかもしれない。
疑問を抱きながら歩いていると、気が付けば二年S組の教室前に移動していた。何だか中でみんながざわついてるようだ。
「遅れて済みませ――ん?」
教室に入ると、クラスの男子共が扉前で一つの机に集中して囲っていた。逆に、女子達は窓側で呆れた表情をしている。
「何があったの?」
「おはよう、水野君。実は今日、女の子の転校生がやって来たの」
「あはは……そう」
女子から話を聞いた俺は、苦笑いをしながら納得し、自分の席に着いて大きく欠伸をする。
俺の机は一番後ろの窓側であり、暇な時はいつも外の景色を呆然と眺めるのが日課になっている。
「水野君は行かないの?」
「まぁね」
興味がないとは言わないが、朝から走り回ったり反省文を書かされたりで眠い。そう言えば、この時間は既に授業時間の筈だが、どうしてフリーなんだ?
「お前ら、席に着け!」
そう思った矢先、鬼瓦が扉を開けて教室に入って来る。まさか、俺をこの場で公開処刑するつもりじゃないだろうな!?
「お前達の担任だった先生は家の用事で急遽休職する事になった。という事で、このクラスの担任は今日から俺が務める。良かったな、お前ら」
「な……何だって!?」
「そんなバカな!」
「俺達のスクールライフが終わった……」
クラスのみんながあまりの恐ろしさに絶叫し、困惑する。俺もその中の一人なのは言うまでもない。奴が何故、妙に機嫌が良かったのか理解出来たぜ。
――こうなったら、鬼瓦も担任を務めれない事情にして――
「水野、余計な動きをすると大変な事になるぞ?」
「やだなー、先生。純情な俺が何かするとでも?」
「その手に持つコンパスは何だ? 一度純情という意味を調べて来い……」
――駄目だ。俺の動きは全て読まれている。かといって、正面から直接やり合って敵う筈もない。仕方ない、ここは一度セーブデータをやり直して分岐点を変えるしか――
「ゴホンッ! お前達も、もう知っていると思うが転校生を紹介するぞ」
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