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~元気で立派でいるんだと思ったら、いてもたってもいられなくてね。
すぐにでもそこにいきたいんだけど、それはできないから。
だから、手紙に想いを託したの。
いつかまた、きっと逢えることを願い、想ってる。いつまでも元気いっぱいで、兄弟仲よく、体に気をつけているのだよ。ずっとお前たちのことを想ってるよ。私の愛しい子供たちよ。どうかこんな親だけど母ちゃんと呼んでおくれ。~
母ちゃんより」
紛れもなく、別れし母ちゃんからの手紙だった。金は目に涙を浮かべながら、銀は目を輝かせながら、手紙を見つめていた。
「金兄。母ちゃん、元気なんだね。僕等のことちゃんと覚えてくれてた。」
「そうだな。銀。」
そういって金は銀の頭を撫でてやった。
二匹は空を眺め、桜薫る風に身を寄せながら、母に思いを馳せていた。
懐かしく、心地よく、穏やかで甘い香りがよくしていた、小さい頃の母のことを。
あの時も丁度、今みたいに桜薫る風が舞う、残桜の頃であった。
銀は突然に、金の方を見やると、
「金兄!僕、決めた!やっぱ、母ちゃんに逢いたい!だから、母ちゃんを探しにいく!逢いにいく!」
「銀!?」
突然のことに金は目を丸くしていた。
だが、その気持ちは金も同じくして持っていたのだった。
残桜の花を風に乗せ、香りとともに春風は、夏の蒼き緑へと転じていた。兄弟の想いに後押しするかのように。
二匹の首もとには、贈られてきた鈴リボンを巻きつけて、鈴音を凜と風に揺らし鳴らして。
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