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桜の香りが朝風にそっと添えはじめ、紅梅の香りと共に、甘やかで馨しい匂いが鼻を掠める。
いつもの様に、背筋を弓なりに伸ばしながら、そっと空を見やる姿が一匹。
少し強面の顔で空を仰ぐのは、兄の金。
その側でまだ目をしょぼしょぼさせ、欠伸をしながら兄にまだ寄りかかりつつ、夢見心地でいるは、弟の銀である。
白という一風変わった猫に逢い、不思議な感覚になりつつもまた逢いたいような気もしていた。
「ほんと不思議な奴だな。あいつは。」
ぼそっと金は独り言をいって、また空を仰いだ。そんな折、また風が目の前で舞い、砂埃にむせた。
「なっ!なっ。ごほ。なんだよ!?」
むせながら、その向こうの風の舞った位置を睨む。相変わらず、また夢見心地の銀は何も気づかず、すやすやと寝息をたてている。そんな弟を気遣ってか、あまり驚かせないようと、そっと寄りかかる背をドアに傾けた。そして、威勢良くそちらの風の方へ駆け出した。何かを察知したのか、殺気立ちながら、声を張り上げた。
「お前。誰だ!俺らになんのようだ。埃かぶせながって。」
すると、砂埃は晴れ上がり、小さな鞄を首にかけ、頭にはベレー帽をかぶり、尻尾にベルをリボンでつけいる。猫がいた。
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