四匹目 配達猫

2/6
前へ
/14ページ
次へ
桜の香りが朝風にそっと添えはじめ、紅梅の香りと共に、甘やかで馨しい匂いが鼻を掠める。 いつもの様に、背筋を弓なりに伸ばしながら、そっと空を見やる姿が一匹。 少し強面の顔で空を仰ぐのは、兄の金。 その側でまだ目をしょぼしょぼさせ、欠伸をしながら兄にまだ寄りかかりつつ、夢見心地でいるは、弟の銀である。 白という一風変わった猫に逢い、不思議な感覚になりつつもまた逢いたいような気もしていた。 「ほんと不思議な奴だな。あいつは。」 ぼそっと金は独り言をいって、また空を仰いだ。そんな折、また風が目の前で舞い、砂埃にむせた。 「なっ!なっ。ごほ。なんだよ!?」 むせながら、その向こうの風の舞った位置を睨む。相変わらず、また夢見心地の銀は何も気づかず、すやすやと寝息をたてている。そんな弟を気遣ってか、あまり驚かせないようと、そっと寄りかかる背をドアに傾けた。そして、威勢良くそちらの風の方へ駆け出した。何かを察知したのか、殺気立ちながら、声を張り上げた。 「お前。誰だ!俺らになんのようだ。埃かぶせながって。」 すると、砂埃は晴れ上がり、小さな鞄を首にかけ、頭にはベレー帽をかぶり、尻尾にベルをリボンでつけいる。猫がいた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加