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頑固者が1人。
ベットの中で脂汗を流している。
一本のロウソクがゆらめき、
部屋の隅の闇を濃く、浮き彫りにしている。
そばには青年がたたずみ、頑固者の手をそっと握っていた。
「親父…頼むよ…親父を失いたくないんだょ…」
その痩せ細った手を青年は両手で包み…
そっと唇を押し当てた。
頑固者は噛みしめた唇から、言葉を絞り出す。
充血した両眼からは、一筋の涙が流れた。
「…いいや…神はひとつだ…ウグッ…
…お前は間違っているぞ…
グッ……キマ…キマこそが…唯一の信ずべき…神だ…」
と、突然
頑固者の額から皮膚を突き破り、
一本の禍々しい角が生えた。
メリメリと伸びる角は、鮮血をしたたらせる…
「お…おやじ…」
…
山間の真っ白な雪に包まれて、
ひっそりと建つ洋館。
その一室からは、
野獣にも似た頑固者の絶叫がこだました…
漆黒の闇夜は黒いベールとなって、
外界からの侵入者を拒んでいた。
…
彼と[祈りの子]の物語をはじめよう。
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