第二章

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「パーソナルカードにはその人のステータスも記載されるんですよね? そのステータスの数値って変わらないものなんですか?」 「いえ、変わりますよ。ステータスにはレベルというものもあって、レベルが上がるにつれてポイントが追加されるんです。そのポイントを好きなところに割り振ることで、色々と変わっていきます」  これは後に知ることなのだが、ステータスポイントは、元々存在しなかったらしい。  はるか昔、テスティアの人間は一人一人が国を滅ぼすほど強かったと言われている。当時は魔法に制限というものが無く、ほんの気まぐれで信じられないような奇跡を起こしていたらしい。  しかし、例えば雨が嫌いなものが魔法で雨雲を吹き飛ばすとする。すると一方で、晴れ続けのせいで作物が育たないと嘆くものが、雨雲を作りだす。  当然その二人は対立し、天候の奪い合いという、何人も巻き込む規模の大きい争いが発生する。  魔法の力が強すぎたせいで、個人のつまらない喧嘩が、第三者の命を奪うほどに激しくなってしまうのだ。  そのことに気づいた一人の神が、テスティアの人間にいくつかの規制を施すことを決定。  その結果、神はテスティアの人間の総合的能力を低下させた。そして新たにステータスというものを作り、ポイントを割り振ることで割り振った分の力を取り戻す……という制度を作った。  つまりステータスの上昇というのは、正しくは力を取り戻すということなのだ。  これはアース人も例外ではない。アースに来たテスティア人が魔法が使えなくなるのと同じ理由だ。これを世界の強制力と言うらしい。郷に入れば郷に従え、といった感じだ。 「レベルが上がらないとポイントは貰えないんですか?」 「ええ。しかし訓練をすればその人の技量が上がるのは間違いありません。場合によってはレベル10の者がレベル30の者に勝つこともあります」  なるほど、つまりプレイヤースキルか。ゲームのキャラ自体がいくら強くても、操作する人間が下手ではうまくそのキャラを活かせない。  レベルを上げることが強さの全てというわけではないらしい。  アリナさんにお礼をして、俺と直人は再び雑談に入った。
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