序章

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 初めはアースにも神がおり、元々アースもテスティアも神との交流は不可能だったらしい。  ところが、アースの人間は次第に神への信仰心を無くし、あろうことか、神の存在を、人の弱った心が生み出した妄想だと認識した。  これに対し、アースを管理していた神々は激怒。その結果、神々はアースの管理を放棄。全神々がテスティアに移動してしまった。  しかしどうやら神々の住む、天界とやらはそう何人も(何神も?)入ることができないようで、その結果、序列の低い神から順に下界、つまりはテスティアに降りることになったらしい。  そして降りてきた神と、テスティアの人々は交流をとることができるそうだ。  ――――説明を最後まで聞いた世界政府は、何とも言えない顔をしながら面会を終了したそうだ。  以上が地球人と、異世界人の初のコンタクトの内容になる。  その後、二つの世界の境界の修復が、不可能と悟った異世界人と地球人は、共生することを決定。それからは不規則に人が消え、不規則に人が現れ……と、慌ただしかったものの、数年もすれば落ち着いていった。  人が唐突に消えるという大事も、それが日常の一部となると意外と順応するものだ。  もう一つの世界へ流れ込むことを神隠しと名づけ、神隠しに備えるためにアースはテスティアの、テスティアはアースの知識を学ぶことを義務付けることになった。  最初は、馬鹿馬鹿しい。ふざけた妄想だ。と行っていた人も、今では異世界のことを許容している。実際に異世界から人が来て、おまけに魔法まで見せられたのだ。むしろ許容したほうが楽といえるだろう。  しかし魔法はアースに来てしばらくすれば使えなくなるらしい。『力』の世界特有の魔法は、『知恵』の世界にとっては異分子とみなされるようだ。  時にはふと一人、二人と数人が消えたり、またある時は施設ごとまとめて何人も消えてしまったりと、物騒な時代。そんな中、俺、柳宗一は何の前触れもなく、神隠しに遭ってしまうのである。
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