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「あのゲーム難しいんだけどな……まあとりあえずは帰るか」
そう言って立ち上がった時だった。
「……ん?」
「……え?」
俺と直人は同時になんとも情けない声を出す。いやだって、そりゃそうだろ……。
「どこだ……ここ?」
目の前の景色が一瞬にして変わったのだから。
「つまりあれか。世に言う神隠しってやつか」
数分は驚きで固まったものの、この現象には心当たりがある。
二十年前、地球人は異世界の存在と、神隠しの存在を確認した後、それらを学ぶことを義務化している。
神隠しは不規則なもので、対策もできない。なら順応するしかないのだ。俺たちは既に異世界の知識を少なからず持っているし、神隠しに遭った際、どうすればいいかも一通り教わっている。
「ここがテスティアか……なんというか、本当に唐突だな」
直人が少し興奮した様に言う。しかし本当に唐突だ。まだクリアしてないゲームがあるのに……。
「直人、この場合どうするんだっけ?」
「最寄りの国に行くんだろ? 確かシンボルとして、でっかい塔が……あれっぽいな」
直人の視線を辿ると、細長い塔が見えた。あれが国の場所を示しているらしい。
「その前に他の人とかと連携とっておいたほうが良くないか?」
どうやらテスティアに来たのは俺たちだけでなく、周りにも大勢の人がいる。
「数が多い……直人、これ全校生徒居るんじゃね?」
「かもな。だったら連携も楽なんだろうけど……」
「あぁ……まあ、あいつが居てくれたら楽だわな……」
俺たちが考えているのは一人の男子。同じ高校一年生なんだが、彼はちょっと普通と違う。
「あ、なんか皆集まってる。……行くか」
「絶対あいつだな……」
俺と直人は複雑な顔をしながら、皆が集まっている方へ向かった。皆も次々につられて歩き出す。近づいてみてわかったが、本当に全校生徒居るのかもしれない。
制服のバッジから見て、二年生も三年生もいた。しかし、人集(ひとだかり)の中心にいるそいつは一年生だった。やっぱりあいつだ……龍宮大和(たつみややまと)。
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