さて、と………ダラダラ始めますか?

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―――日本のとある場所 柄にも無く、車に轢かれそうな子供を助けた 人殺しである僕が、だ 全てがスローモーション 車も、僕も、僕に飛ばされた子供も、道行く人々も、全てが そして世界が忘れたように、再び元通りの時間を刻む 「キャーーーーッ!」 「お、おいッ!大丈夫かッ!」 様々な声、駆け寄る人々、身体を埋め尽くす激痛 不思議なことに身体は痛いが、瞼は落ちてくる 「救急車だッ!」 「しっかりしろ!諦めるなッ!」 意外と人々は優しいんですね 冷めきった世の中では無くて、嬉しいです だけど、僕は人殺し ここで死ぬのが定めなのでしょう、意識が遠退いて行くのがはっきりと分かってしまう 「お兄ちゃん…………!」 先程助けた子供…………怪我は擦りむきくらいですか……… 「良か…………った………」 言葉を放つことさえ激痛、頭を撫でてやる事も激痛 けれど、最期に人助けを出来た心は温かくなっていた どうして最初から人助けをしなかったのでしょうか? まあ、今更全てが手遅れですかね ―――………… 「あれ?」 気がつくと真っ白な場所 確か子供を助けて、意識を失った筈ですが………… 「ふむ、何方かが救急車を?」 そして助かった………? 「おお、起きたかね?青年」 「ッ!」 「ふむ、そう警戒せずとも危害は与えぬ」 「貴方は………?」 見た限り、医師の方では無いですね…………… 引き締まった大きな身体に、立派な髭、威厳を放つ瞳に、豪華な服 まるで王さまの様なこの男性を、誰が医者と間違えるのでしょうか しかも、気配を感じなかった…………割とそう言った物は得意なんですけどねぇ 「仕方あるまい、人が感知できるレベルでは無いのだ」 「ッ!貴方は今…………僕の心を」 「如何にも。済まぬな、悪意は無いのだ、許してくれ」 「いえ、お気になさらず。それで、ここは?」 見渡す限りの白い場所 果てしなく続く先に終わりは見えそうに無い まるで夢の中みたいですね 「ここは生と死の狭間、と言えば分かりやすいかな?」 「生と死の狭間……………」 やはり僕は死んでしまったのか…………… 未練は無いけれど、それはそれで寂しい様な 嘆いても仕方は無いのですが 「実は君に折り入って頼みがあるのだ」
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