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福「では、自己紹介を始めましょう。そうですね。廊下側の人からお願いします」
福井先生の指名を受け、車座を組んでいた廊下側の生徒がひとり立ち上がり、名前を告げる。
?「水上藤吉(みなかみとうきち)じゃ。演劇部に所属している」
ん? 誰かと思えば藤吉じゃないか。
独特の言葉遣いと小柄な体。肩にかかる長さの髪をゆったりと縛ったいでたち。初対面の人だと女子と間違える可愛さ。間違いない、アイツは水上藤吉。去年、僕とクラスが一緒だった奴だ。
それにしても、女子の制服を着て、言葉遣いを直したら、女子と見分けが付かない。
藤「―――――――と、いうわけじゃ。今年一年よろしく頼むぞい」
軽やかに微笑み、藤吉が自己紹介を終える。か、可愛―――――ぅぉっとぉ! はやまるな、有明大斗! アイツは男だ!
?「………………山中陽太」
僕が、『藤吉は男だ』と自分に言い聞かせていると、いつの間にか次の生徒が自己紹介をしていた。
どれどれ? って、今度も知り合いじゃないか。
相変わらず口数が少ないな。小柄だけど引き締まった体で運動神経も良いのに、どうして大人しいんだろう。やっぱり目立つと色々とやりにくいのかな?
それにしても、見渡す限り男だな。成績最低クラスだと、女子はほとんどいないんだろうか。
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