王子様とオルタンシア

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「寄り添わねば華ともされぬ。名前の通りだな。オルタンシア」 たたずむ王子。 たたずむ華。 笑う唇が言葉を紡ぐ。 「オルタンシアと、呼ばないで」 『私たちは薔薇』 「大輪の華」 『華の王』 「愛情を受けた真っ赤な薔薇」 『愛情の血を啜った深紅の薔薇』 「愛されなかった哀しき紫陽花。二色に移ろい砕かれ支えねば認められぬ華」 すらりと抜かれた銀。 赤い水面に染まる。 「愛して欲しくとも、その願いも分からぬ無知を」 水面が跳ねる。 咲き誇る華。 目と目が重なる。 「愛している」
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