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綺麗な華が水底へ。
汚い茎も葉も水底へ。
沈む華を掬いあげれば、盛りの美しさを見つける。
手折った華を抱き締める。
「遅過ぎたのか。オルタンシア」
愛しき弟妹。
「守れるようにと。力を手に入れたのに」
愛しき紫陽花。
青から紫へ。
そして紅く染まった。
「愛している。愛しき弟妹」
ひとりぼっちの王子様。
足下に一人の胴体。
数えられぬ首と瞳。
赤い泉の真ん中で。
一人の頭を抱いた。
嘘吐きの言葉を与えられた華の為に。
ひとりぼっちの王子様。
一人の王子様とお姫様の為に。
ハラハラと。
ハナニラが散る。
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