王子様とオルタンシア

7/7
前へ
/13ページ
次へ
綺麗な華が水底へ。 汚い茎も葉も水底へ。 沈む華を掬いあげれば、盛りの美しさを見つける。 手折った華を抱き締める。 「遅過ぎたのか。オルタンシア」 愛しき弟妹。 「守れるようにと。力を手に入れたのに」 愛しき紫陽花。 青から紫へ。 そして紅く染まった。 「愛している。愛しき弟妹」 ひとりぼっちの王子様。 足下に一人の胴体。 数えられぬ首と瞳。 赤い泉の真ん中で。 一人の頭を抱いた。 嘘吐きの言葉を与えられた華の為に。 ひとりぼっちの王子様。 一人の王子様とお姫様の為に。 ハラハラと。 ハナニラが散る。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加