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妾の王子様。
幾人目かの王子様。
ある日見つけた泉にお出掛けさ。
呪われた王子様。
片目を亡くした王子様。
「ごきげんよう」
「……」
甲高い声に返事はない。
呪われた王子様。
「花を落としたそうよ」
「また独り言をなさった」
赤い瞳を悪意の水に浸けても、溺死しない。
呪われた王子様。
死を望まれるだけ。
「所詮は妾腹」
「呪われて当然」
「一人泉へ」
「奇行は続くばかり」
「卑しき子」
「――も消えたように」
「散ればいいものを」
「ねぇ」
振り返る先で王子様は笑う。
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