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ある国があった。
王さまと妃。
たくさんの妾と王子と姫がいた。
ありふれた世界のありふれた国。
まだ滅びるには時間のある国。
そんな国の城が空っぽになる。
一人の人間のお願いが
一人の人間の手によって
叶うから。
お城は空っぽ。
国は国ではなくなった。
けれど、一人が帰ってくる。
たくさんいた王子の一人が。
王になることを拒んだ王子。
強くなりたくて旅立った王子。
空っぽのお城へと。
出迎えのない。
誰もいないお城へと。
汚い枯れた茎と葉ばかりの空っぽのお城へと。
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