王子様とオルタンシア

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淵にたたずむ王子様。 泉に咲くオルタンシア。 底に沈む華――生首。 底に沈む宝石――眼球。 腐敗が進まぬ不可思議な泉。 赤い赤い泉。 血に染まった地獄の泉。 「狂った?」 『狂った?』 「誰が?」 『誰が?』 繰り返される言葉。 汚れない瞳が王子を見る。 哀しき瞳がオルタンシアを見る。 「自覚もないか」 『綺麗なものは集めただけ』 「汚いものは取り除いただけ」 「そこに沈むのは人だ」 「傷付けない綺麗なもの」 『傷付ける言葉のないもの』 『私たちを傷付けるものはそこにない』
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