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昼休み職員室で昼食摂って保健室に戻ったら、ベッドにはスヤスヤと眠る男子生徒の姿があった。
健やかな寝息からして具合が悪くて寝入っているのではないことは一目瞭然だ。
腕時計に視線を移すと昼休み終了まであと10分を切っている。
(この時間なら起こしてもいいか)
「おぉい!美術部員!!起きろ。もう昼休み終わるぞ」
ちょっと声をかけたくらいじゃ全く反応を示さないのはいつものことだ。
気持ち良さげに眠る人間を無理矢理起こすのは気が引けるがしようがない。
「おい、起きろ」
彼の立てた前髪をクシャクシャに撫で回すと、やっとピクリと目蓋が動いた。
「う゛ん゛…」
微かに唸り声を発して、美術部員は横になったまま眼を瞬かせる。
「午後の授業始まるぞ」
「や、だ…」
眠そうな声で呟いて、美術部員はもぞもぞと身体を動かし、顔を枕に埋めた。
「やだじゃねぇよ。サボリを許すわけないだろ」
「う゛~…う゛…、具合悪ぃ…」
(嘘を吐け、嘘を)
「じゃ、寝てりゃいんじゃん?」
「寝てる…」
俺のイヤミを込めたわざとらしく大きな嘆息を意に介さず、美術部員はふにゃりと微笑んだ。
「次、誰の授業だ?電話かけといてやるから」
「先生、優しい」
END
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