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ーーどうしたんだろう……。
追いついてから、少年はずっとミスティに謝り続ける。何度も何度も。
探しあてるのに、かなりの時間を費やしたからか。待っているだけ、というのは酷だったかもしれない。
「怒ってないから、顔あげて」
彼女は、懐から静かに例のものを取り出す。
「はい、コレーー」
差し出そうとしたら、後ろから腕をぐいと強く引っ張られる。
「殿……セイト様」
引っ張ったのは、彼だった。
ーー何故、止めたの。
驚きのあまり「殿下」と言いそうになったが、何とか言い直す。
その行為が不思議でならなくて、セイトの手を振りほどこうとするも、徒労に終わる。途方に暮れ、彼の顔を仰ぎ見る。
「渡しちゃダメだ」
瞳の色が、いつものと違う。鮮やかな赤色ではない。
黒に近い赤ーー深紅の色に染まっていた。
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