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ーー微妙な関係
白タイルの床で窓からは陽光がたくさん入る。中央には長細い年代物のテーブルがある。ガタッと音が鳴る。イスが勢いよくひかれたようだ。
「……セイト」
そこには目を見開き呆然と立ち尽くす陛下の姿があった。
「……久しぶり、父さん」
最近、顔を合わせていなかったらしい。長い間二人の間に沈黙が続くと、次第にセイトの顔が険しくなる。
「飯食うのに来ちゃ悪いかっ。やっぱ帰るっ」
「陛下の御前にございます。口をお慎みください、王太子殿下」
食堂を出ようと背を向けると、別の声が聞こえた。
「……お前に言われる覚えはない、ロテス」
そう言い放つセイトの瞳は、ひどく冷たく氷のようだった。
「私はただーー」
「二人とも、やめないか。食事が冷めてしまう。セイト、頂こう」
ロテスと呼ばれた男は、謁見の際に陛下の側に控えた片眼鏡の男性だった。恐らく、彼が大臣だろう。
「……わかった」
セイトはため息をつき、イスへと向かう。
「いただきます」
会話がぽつぽつ交わされながら、食事は進む。
「……まさか、本当に殿下を連れてこられるとは」
背後から聞こえた声に、ミスティは振り返る。
「どういう意味ですか」
いつの間にか、先ほどの執事が立っていた。
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