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ーー仮初めの平穏
がさごそがさごそ。
カッカッカッ。
物音が聞こえる。
「ミスティ、もう朝よ」
ばさっ。
ーーさ、寒い。
同室のメイド、ネグに布団をはぎ取られ、体を小さくする。
「…………日が、昇ってないように見えますが」
のろのろと瞳を開け、窓を見やる。月は無いが、太陽も出る気配は無い。
「日の出前に起きないと、仕事が回らないの。さぁ、早く着替えて」
カーテンを勢いよく開け、言われる。
ここは、経費削減のために使用人ーー特に、見習いや新人は、二、三人で一つの部屋を使うのだ。
「お待たせしてすみません。支度できました」
「そう。じゃ、まずは朝礼……じゃなかった。朝当番あるから、厨房行くわよ」
「わかりました」
「スープお願いね」
ミスティは頷き、作業に取りかかる。厨房だと通された部屋は、他に漏れず年季の入った調度品であふれる。
朝当番とは、使用人たち全員の朝食を作ることだ。週一で交替する。丁度彼女たちは、今日から当番なのだ。続いて朝礼とは、使用人の会議で仕事内容や連絡事項を大体するものらしい。
「新入り、朝当番なのか。これは楽しみだ」
シェフが一人来た。それを皮切りに、使用人たちが集まってきた。何とか皆が集合する前に出来上がった。
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