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『隊長……、今の彼は?』
兵の一人がおもむろに彼に質問する。 その疑問は他の兵も思う所だったのか、全員が隊長の返答を待つように固まっていた。
『彼は、』
隊長は少年がいた場所を見ながら、呟くように口を開く。
その目には畏敬がこもっていて、彼は動悸がおさまらない様子だ。
『彼は、世界最強だ』
その隊長の返答に、その場にいる兵たちは更に沈黙を深くした――――
「世界、最強……、くぅぅぅぅ! かっけぇぜ!」
いやぁもうやべぇやべぇ!
最強とかまじかっけぇ!
破滅の業とす、なんて、あああああああっ!
一度で良いから大衆の前で言ってみてぇ!
「ふぅ、俺としたことが取り乱しちまった」
ベッドの上で騒いだせいでシーツがグシャグシャになっちゃった。 まぁ、ほっとこう。
俺は白の布団の上にある携帯……、その画面に映る文字を黙読する。
『神々の化身たち』
とあるサイトの小説、それもファンタジー欄トップを突っ走るこの作品を、
『これ、まるでお前だな』
と友達に薦められ読んだところ、もうハマっちまったわけだ。
「まるでお前だな、か」
テンションが上がっていた俺だったが少し前に友人に言われた言葉を思い出し、俺は急激に気持ちが冷めるのを感じる。
都心第三学区高校一年生。
その称号が欲しくて俺はこの学校に入るために勉学運動問わず努力した。
それ以上は望まなかったさ。 この学校が特殊な機関であると知っていても。
でも俺は望みもしない、いらないレッテルを世間に貼られちまった。
はぁ、これも何もかも、あの意味不明なお偉いさんのせいだ! あん時にあれを無視すりゃぁ……。
「猫くーん? いるかな……?」
部屋の扉の向こう側から怯えた、俺を呼ぶ声が聞こえる。
こんな……、
「お、悪かった。
つか呼び捨てでいいよ」
「いや! でも……あの猫くんだし」
こんな怯えられるはずなかったんだよ!
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