由衣サイド

3/4
前へ
/85ページ
次へ
「今日は、鴨南蛮が食べたい。それから、予定空けといて」 「何かあるのね?」 「正直に言うと なにもない」 「はっ?・・・何なの!?意味が分からない。」 「・・・分からない?ハハッ、まあ、そうだな。 今日はお前の特別な日だ。」 「!誕生日・・・」 「自分の誕生日ぐらい覚えとけよ。」 「ハハッ、忘れてた。」 「変わり者めが。」 そんなこと、覚えていてくれたんだ! ・・・勘違いしちゃうよ・・・ 一緒に暮らしていく約束として、互いの誕生日は祝うことになっている。 一ヶ月前、私達は、なぜかルームシェアすることに、なった。 私の父が巨額の借金をしていたのが分かり、母と弟は、出稼ぎに行った。弟はまだ小さいから母のそばがいいと一緒に行った。 家は、競売にだされた。安く住める場所は、ルームシェアの家で、相手が誰かなんて知らなかった。 「オイ、何ボーッとしてんだよ??」 「別に、何もない」 「お前の親父は今どこにいるんだろう?」 「アフリカにまだいると思う。」 「いつまで逃げて暮らしてるんだ?」 「しらない。関わりたくないもん」 そのとき、チャイムが鳴った。 「とにかく予定空けといて」 そう言えば、彼は教室に帰って行った。 私も教室に帰ろう。 クラスも、学年も同じで、席も隣同士。ついでに、住んでいる家まで一緒なんて、由衣にしてみれば、奇跡で、幸せとしか、言いようがない。 まあ、彼のことが好きなのだから、当たり前かもしれないが。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加