恋の病

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 俺が停学になってもなにも言わずに普段通りに接してくれる姉を、悲しませたりしないためにはどうしたらいいだろう、と。  つまりは喧嘩などしないで済む方法を探すしかないわけだ。  散々考えても答えは出ていない。  これについては、他者に協力を、とは思うが友だちがいないのにどうしろと言うのか。  交遊関係皆無の自分を、今日ほど恨んだことはない。  どうにかならんものか。  脳内シナプスフルスロットル(自分でも何言ってるかよくわからない)で、相談出来る可能性を持つ相手を探す。  すると三名だけ候補が浮かんだ。  第一候補、姉。  しかしすぐさま却下。姉上は学生時代、喧嘩上等な方だったので便りにならない。まあ、今は一見鳴りを潜めてはいるが、怒った瞬間修羅と化すのは変わらない。  続いて第二候補、担任。  学校での唯一の理解者。彼女にも頭が上がらなかったりする。  相談するには持ってこいな相手。  しかし担任は、姉と仲が良いのですぐさま伝わる可能性がある。  別に伝わっていけないことはないだろうが、恐らく姉は、俺に対して誰も手出しさせないよう自分の名前を出すだろう。  数々の伝説を持つ、その名を。  あまりそういうことはしたくないので、担任は却下、とまではいかないまでも保留だ。  最後の第三候補。  帰ってこないし、あてにもならない親父に代わって出たのが、学級委員長。  自分でもなぜ出てきたのか謎だが。  まあ、先ほどの夢に出てきた相手がそれなわけだが。  それにしたって話したこともない相手に相談とはこれ如何に。  結局、どれもあてに出来ないので自分で解決するしかない。 「はずだったんだけどなぁ」 「何か言った?」 「いんや」  放課後、夢で見たような構図が出来上がっていた。  つまり、委員長と俺が並んで歩いているわけだ。俺の家に向かって。  謎である。  帰り際に声をかけられ、悩みがあるなら相談に乗るとまで言われた。  そこで何もないと返せば良かったのに、とすでに何度も後悔している。茹だるようなくそ暑い炎天下の中、汗をだらだらと流しながらひたすらに。  せめて風よ吹け。 「暑いね」 「……だな」  よくわからん。なんだこの会話は。 「また学校に来てくれて良かった」  いきなり話題が変わった。いや、まだまともに会話もしてないが。
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