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そして何が良かったのか。暑さに頭がやられたのだろうか。
そういえば何故、夢に彼女が現れたのだろう。別に意識したことはないんだけど。
まあ、あまり馴染みのない人間が夢に出ることは、割とあることらしいし、気にする必要もないだろう。
「良かったって何で?」
ということで会話に戻るわけだ。黒髪が似合う長髪美人的な委員長との。
「クラスメイトのことを心配するのは、委員長として当然なのです」
などと偉そうに言われた。こんなキャラなのかな、と思っていたら「なんて言ってみたり」と続けられた。
少しお茶目なとこがあるようだ。
「で、本当は?」
「え、あ、その」
急にもじもじしだす。顔真っ赤。初めて話をした相手の家にあがると言い出した人とはまるで別人のような。
「それより!」
盛大に逸らされた。あまり言及しないほうがよさげだな。
「なんで停学になってたの?」
「は?」
我が担任は以前から俺の停学理由を公言していたはずなんだが。
「喧嘩したからですが?」
何故か敬語になってしまう始末。
「あ、そういうことじゃなくて。えっと、なんで喧嘩したのかな、って」
なるほど、それか。考えればわかりそうなものなのに今気付いたよ。
「別に。ただ絡まれたから殴って、喧嘩になったってだけだよ」
「……嘘だよ」
「嘘じゃない」
本当に、嘘ではない。少しはしょっただけで。
どこぞの漫画の優しい不良じゃないが、喧嘩するのには理由がある。つまり、委員長はその理由を聞きたいのだろう。
言うつもりなんて、微塵もないのだが。
「あの」
後ろから、声をかけられる。
当然足を止めて、振り返る。見覚えのある少女。確か近くの中学校の生徒。暑い中、よくも呼び止めてくれたな、と言える相手ではなさそうだ。
「こないだは、助けていただきありがとうございました!」
腰を九十度曲げる勢いで頭を下げられる。
なにこれ。
「あのあと停学になったと聞いて、訳を話しにいったんですけど、取り合ってもらえなくて……。迷惑をお掛けして――」
「いいよ」
少女に最後まで言わせない。謝らせない。
「俺は好きでやってるだけだから、気にすんな。ただ、もうあんなことすんなよ。またあんなことになったら、助けられるかわからないからな」
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