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魔力変換器欠乏症。大気中の魔素は体内の魔臓へ吸収された後、本来は魔力変換器により各々の相性にあった魔力へと変換されるのだが、これができない人がいる。
それが、魔力変換器欠乏症の病を持つ人々だ。
魔法が日常に溢れているこの世界で、その病を持つ者は当然のけ者扱いとなる。
俺、御嵩(おかさみ)宗弌(そういち)は、何億分の一の確率でその病にかかってしまい、案の定魔法が使えない。
よくある、落ちこぼれには秘密があるというのも所詮はフィクション上での話。現実は厳しく、世間の俺に対する風当たりはよろしくない。
両親共にジパング生まれ。ジパングっていうのは東にある小さな島国で、俺はそのジパング人の特徴である黒髪黒目を引き継いでいる。
我ながら、特に言うこともない平均的な顔立ちだと思う。身長も百六十五。強いて言うなら少し目が鋭いくらいか。
妹、御嵩優奈(ゆな)も同じく黒髪黒目。ただしその容姿は俺とはレベルが違う。
ちょっと長めで所々枝毛のある俺の髪と違い、優奈の髪は縛らずに腰まで伸ばしており、質も絹のようでさらさら。
強いて言うなら童顔だが、言うと怒られる。本人は気にしているが、あいつはどれだけ自分が異性に好意を向けられているか、気づいてないに違いない。
兄として妹が魅力的なのは誇らしい。おまけに優奈は魔法の腕も良く、文武両道ならぬ文魔両道だ。
欠点らしい欠点はない。強いて言うなら運動が苦手なことくらいだろう。
「おーっす、宗弌」
桜庭(さくらば)魔法学園高等部一年二組、昼休みにて、寝起きの俺に声をかけてきた男子がいた。
「レイか、おはよう」
男子の名前はレイモンド・ウィレス。ざっくりと短く切った金髪に、百七十五の身長。瞳の色は明るい茶色。やや筋肉質で爽やか系だ。俺はレイと呼んでいる。
「宗弌、おまえ“あれ”買うよな?」
「あれ?」
「通行証だよ! 人工異世界の!」
◇
……まず初めに、俺の過去から説明していきたい。
魔力変換器欠乏症の俺は、学園でいう落ちこぼれ。
国語や数学ならともかく、魔法学園というのだから当然魔法も習うわけで、学んだところで実用できない俺はその授業中はいつも図書室行き。
俺がここ、王都マクドラセルに憧れたせいか、両親が無理をしてまで魔法学園に入学させてくれたのだ。
いくら居心地が悪くても、絶対に退学はしないつもりだ。
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