プロローグ

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とはいえストレスは溜まる一方。そんなある日、家に帰って手持ち無沙汰にしていた所、ふと以前耳に聞いたゲームなるものの存在を思い出した。 ゲームとは、旧文明の遺産であり、電子機器を通して画面越しに存在するものを操作して楽しむという、なんともややこしい物だった。 魔法の使えない俺は、ほかのみんなと比べ色々と経費が省かれる。 使い道のない金が随分と溜まっていたので、近所のレトロショップで、そこそこの値段で売られていたテレビゲームというものを購入。 これからお世話になるだろうし、ソフトも中々終わらない物を買って、いざプレイ! ――結論から言うと、俺は見事にゲームの虜となった。 おそらく、俺は現実で魔法が使えないためだろう。画面越しとはいえ、自分の操作している人間が魔法を自在に使うのを見ると、気分が爽快になる。 旧文明でゲームが人気だった理由は“現実ではできないことができる”だが、俺はプレイした瞬間その意味を理解した。 それからはゲーム三昧な日々が続いたのだが、無意識のうちに優先順位が人間関係よりゲームになってしまった。 気がついたら俺は孤立。妹にも見捨てられ、楽しくプレイしていたゲームも、気がついたら現実逃避でプレイしている時もあった。 ……というのが、中等部二年の頃の俺の黒歴史の内容。 高等部では絶対に成功させる! と俺は決心し、中学三年の頃からは少しずつ人間関係を修復することに努めてきた。 そして高等部入学。所謂高校デビューを目論んだ俺は、入学式の後の自己紹介で、早速ポカをする。 「は、はじめまして、御嵩宗弌です! 趣味はゲーム、特技もゲーム! 苦手なことは魔法全般ですっ!」 テンパってしまった。あまりの緊張のせいか、つい正直に言ってしまった。 やっちゃったものは仕方ない。これで俺の青春時代も終わりだなと思うと逆に楽に……まあ開き直ったわけだが、もうどうにでもなれといった感じで自己紹介を再開した。 「ぶっちゃけ魔力変換器欠乏症ですが、それとは関係なしに皆とは仲良くなりたいです。よろしくお願いします」 さて、明日から、いや今日の放課後からまたゲーム三昧だな……と思って席に着く。そんな時だった。 「おまえ、変わってるな」 爽やかスマイルでそう言ってきた、初めて会話したクラスメイト。それがレイだ。
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