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夢のようだった。画面越しの世界が遂に本物の世界となるのだ。
俺が、あのゲームのキャラクターのように剣を持つことができる。勇者になって魔王を倒すことができる。お姫様と結婚することができる。
初回だけあってか、人工異世界へ行ける人数は限られている。
人口異世界へ入るには通行証というものが必要で、今回は抽選で決めることになった。
というのも、もし通行証の入手方法が購入の一択なら、たちの悪い貴族たちが大量に持ち去ってしまうのだ。
経済力の問題もあり、明らかに一般市民には不利となってしまう。最悪、身分の上下を持ち出されたらひとたまりもない。
だから先ほどのレイの『買う』発言は、抽選を受ける権利を買うということだ。
◇
「ああもちろん。あの世界は俺のために創られたといっても過言ではないからな」
「はは、確かに言えてる。魔力変換器欠乏症の上にゲーマーだもんな。もし二人とも当たったらおまえがリードしてくれよ」
「するなら女がいいなぁ……」
「嫌なこと言うなよ……」
「「はぁ……」」
モテない男はデリケートなのだ。
「女子は皆ラースに盗られたからな~……」
俺の呟きにレイはうんうんと頷く。
ラースというと、つまりはこの国の王子。俺に助け舟を出した張本人でもあるのだが、その代償は大きかった。
彼の演説紛いの自己紹介は、何より多くのクラスメイトを感動させた。
確かに俺への風当たりは良くなったものの、クラスメイト……特に女子はほとんどラースにベタ惚れ。
王子というステータスと、そのイケメンフェイスが更に拍車をかけたのだろう。おかげでうちのクラスの女子は、ほとんどが玉の輿を夢見ている。
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