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――おーいっ!
風に撓んだ枝同士が擦れる音に混じりやや高めの少年の声が届くも、カブトの瞼は上がる気配を見せない。
少年は色素が薄くやや茶味がかった髪を風に揺らしながら古木の根元に辿り着くと、カブトの肩を揺すりながらもう一度挑みかかる。
「おーいっ、カブト! カブトってば!」
ゆすり、ゆすり。
「まったく、一日中寝てばかりの動物たちでさえこの時間は起きているものだというのに。ほらカブト、いい加減に起きたらどうだい」
青年カブトの瞼が、さながら夜の帳が上がっていくようにゆっくりと持ち上げられる。蓋をされていた黒の瞳が僅かの間彷徨い、それからようやく少年の姿を捉える。口を、開く。
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