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ある日の病院で、真っ白な一室で少年は目を覚ました。
体中に巻かれた包帯は痛々しく、繋がっている管からは点滴が流れていた。
少年が目覚めた事で周りを取り囲んでいた祖父と医者らしき男性と看護婦は安心したように息をついた。
「…良かった…先生ありがとうございます」
祖父は涙ながら礼を言うと医師は優しく笑った。
少年はまだ夢の中にいるような居心地で周りを見渡した。
部屋の隅で安心したように笑っている父と母を見つけると少年は緩やかに手を伸ばした。
何故そばに来てくれないのかともどかしさから言葉はかすれた。
祖父は少年の小さな声に気付くとやんわりと少年の手を掴んだ。
祖父は悲しげに瞳を揺らした。
「…父さんと母さんは…別の病院にいるんだよ」
医師と看護婦は顔を示し合わせると優しく笑った。
「そうだよ。だから早く治そうね」
「お祖父様…少し」
祖父はゆっくり少年の手を離すと医師と病室を出た。
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