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「…燃えるような赤い髪と瞳の男。無表情のまま同級生達を殺していく姿は……夢を見てるみたいだった」
星谷は夜空を見上げた。つられて健も見上げた。数少ない星が見えた。町の明かりが明るすぎるのだろう。数少ない星は人の心を癒す力がない。
「その男が星谷さん達が探している妖怪ですか?でも、何で…」
「何で生きてるか、それは…あの男の気まぐれなのかもしれない」
健は星谷に真意を求めるように見つめた。星谷はゆっくり自身の胸に手を当てた。そのしぐさは彼女が水口に渡す刀を取り出すようだった。
「男は私達を見て殺す手を止めた。もう生き残ってるのは私達しかいなかったけど、あの男は私達を見つめていた…私を庇うように前に立つ継君と水口に私」
健は初めて聞いた名でも予想はついていた。星谷に会いに来た男。水口の片割れ。
「男は自分には体が必要だと話をし始めた。何年も使い続けた体は駄目になり新しい体が必要になる。そして、まだ女性の体を試したことがないと………男は私の体を求めたの」
「体を変える妖怪ってことですか?でも、星谷さんは…」
「継君が私を庇ったの。自分の体をあげるから私と水口を助けてほしいって……最悪な話」
冷たい風が巻き上げる。健は想像した小学生が妖怪に立ち向かい、好きな女の子と兄弟を助けるために自身の命を投げ出す。その判断になる小学生が分からなかった。小学生の恋、家族。その状態で自身の命を投げ出す子供がいるのが信じられなかった。
だが、彼女も水口も生きている。
「…待ってください。それが本当なら、あの時星谷さんに会いに来た男はもう妖怪なんですか?」
「…彼はまだあの男の物じゃない。その時男は言ったの、今すぐ体を奪うわけではない。だから、いつか私達を見捨てて捨てる時が来るかもしれない」
健は納得した。小学生の勢いともとれる行動。一生続く恋だと誰もが思わない。
「…だから、私の中に男の力の一部を植え付ける。継君が逃げれば控えとして私があの男の物になる」
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