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大きな力に動物達の本能が騒いでいるのだ。健は異様な空気を感じるのと同時に星谷から感じる空気に息を飲んだ。
星谷から感じる空気は先程とは違っていた。今、世界を包んでいる空気と彼女から感じる空気が一緒だった。
健はゆっくり星谷の腕を離した。星谷の体はもうふらついてはいなかった。ゆっくり目を開いては閉じた。まるで見える世界を確認するように。
そして、ゆっくり健を見つめた。健は星谷を知っているのに初めて出会う人のように感じた。そのくらい彼女から発せられる空気は別人だった。
「……」
「…星谷さん!」
星谷が片手を上げると強い風が彼女を包み込んだ。強い風で健は目を開けれず思わず目を瞑った。枯れ葉が健の頬にパシッパシッと当たった。健は星谷の腕を離した事を後悔した。離すべきでは無かった。
彼女の異様さに気付いても離すべきでは無かったのだ。
風が止み、健は直ぐ様目を開けた。だが、目の前には星谷の姿は無かった。慌てて歩道橋の下を覗きこんでも車が変わらず通りすぎていくだけ。辺りを見渡しても星谷はおろか人一人見当たらず、異様な空気しか感じなかった。
※※※※※※※※※※※
結界が無くなった屋敷で継は部屋から外を見つめていた。ベッドとクローゼットしかない部屋は無機質だった。屋敷のリビングや廊下にさえも溢れているアンティークの家具に絵画。それなのに彼の部屋にはベッドとクローゼットしか無かった。
「……」
「……興味無いみたいだな」
音も立てずに色が部屋に入ってきたことに継は驚かなかった。彼は昔からこうだった。
継は落ち着いていた。結界が無くなろうと一夏が裏切ろうと、あの雪女が取り乱すことは想像がついていた。
「…それは、あんたもでしょ」
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