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色は相変わらず無表情だった。イカれた殺人狂ならば取り乱して笑えばいい。だが、彼は違った。
あのバスの中の事を継は思い出した。あの時も色は笑っていなかった。ただ、作業をこなしている。そんな印象だった。
「あの狐達を止めないわけ?」
「…朧が楽しんでいるからいい」
色は継だけを見つめていた。一夏が解いた結界のせいで人間がここに来るのは確実だ。それに、千雪が一夏を止めているが色の命を狙いに来るのは予想がつく。
だが、この男は継の前から動かなかった。
「…僕は逃げないよ。あの約束があるかぎり」
継は自嘲気味に笑った。幼いながら守ろうと決めた約束。それだけで、ここまで来たことに継は愚かさを感じていた。
「…そんなに、あの少女が大切か」
継は場に相応しくない程、びっくりしたような顔で色を見た。色も初めて見せた彼の表情に戸惑った。まるで子供の表情だった。
大人びている青年が見せた少年の顔に色は若さを感じた。
「…なずなを初めて見たとき、僕は自分の一部に出会ったと思った。恋とか愛とか分からないけど……彼女はいなくてはならない存在なんだよ」
「小学生にしてか…」
色は目の前の青年の頭を覗いてみたいと思った。いずれは自分の体になる青年。
幼いながらに少女と弟を守ろうとし、枷としてなずなに植え付けた罠。色は胸が高鳴るのを覚えた。
「…まだだ、俺が見たいものは他にある」
「何を言ってるわけ?」
継は色の言葉に嫌な予感を感じた。幼いながらに感じていた違和感。
体が目的なら直ぐに奪えば良かったのだ。だが、この男は幼い自身達に約束させた。
まるで試すように。
「…あんた一体何をさせたいわけ?」
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