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「…来たな」
色が呟いた瞬間、継は窓の外から気配を感じ振り返った。窓の外には星谷がいた。虚ろな瞳でここではない何処かを見ているような視線だ。
「窓を開けてあげろ」
継は色命令通り窓を開けた。星谷は部屋に入るとゆっくり色の前に歩み寄った。継には一切目もくれず。
「…あんた何をしたわけ?なずなに手を出すなって言ったはずだ」
色は星谷の肩を引き寄せた。人形のように体が揺れ、されるがままの彼女に継は不安を覚えた。
「…お前は不安にならないのか?」
「…あんたがなずなを離せばなくなるよ」
継は色を睨み付けた。継に睨み付けられても色は無表情だった。なずなの体を狙っているのか、何か他に目的があるのか継には分からなかった。
「…今、この子の体を動かしているのは俺の一部だ。あの日、この子の中に植え付けた時から俺は見ていた」
「…今さら昔話でもする気?」
継の片腕がビキビキと音を鳴らした。彼の片腕は肩から手先まで黒く変色し爪が長く伸び、刃物のようだった。
色は継の威嚇に動じず、人形のように意識の無い星谷を見た。少女から女性へと成長した彼女だがまだまだ子供らしく、あの日から時間が止まっているような感覚を覚えた。
だが、彼女も彼らも成長している。
「昔話をするつもりはない。今、俺は確認したい」
「何が…」
色は静かに笑った。無表情だった顔がなくなり、彼は笑いながら星谷の首を掴んだ。
「…っ!かはっ!…」
「なずな!」
星谷は目を見開き咳き込んだ。継はますます色を睨み付けたが動けなかった。開いている窓から寒風が部屋に入り込み三人の体を冷やしていく。
「…朧」
「おせーよ!」
開いていた窓から朧が部屋に飛びはいり、継の背後にのし掛かった。変色した片腕を朧は足で押さえ込み継の頭を床に押し付けた。彼の見た目とはそぐわない重みに継は身動きがとれなくなった。
「…朧!」
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