昔話

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「…朧、少し遊んだら引き上げろ」 色は星谷の首から手を放し、彼女の体を抱き抱えると部屋から出ていこうとした。 「待て!なずなを離せ…!」 継は朧を振り払おうとしているが全く動かなかった。むしろ、徐々に重みが増し床が軋んでいた。 「…話があるだけだ」 色はそれだけ言うと部屋から出ていった。静かに閉まる扉の音が継には恐ろしく感じた。永遠に彼女に会えなくなりそうな不安。 色の初めて見せた笑顔。歓喜、狂喜、残酷な予測しかできず継は歯を食い縛った。 「さぁ、遊んでやるよ♪」 継は思いっきり変色している腕を振り払った。腕は朧の頬に当たり、朧の体が壁にのめり込んだ。大きな音が屋敷全体に包み揺れた。 継はゆっくり起き上がると朧を睨み付けた。 「…僕の邪魔をするな」 「……ははっ、いいねぇ。てめぇの事はガキん時から気に入らなかったんだよ!ぶっ殺す!!」 朧は壁から体を離し継を見て笑った。狂喜と殺気の混じった笑みに継は嫌悪感を抱いた。 ※※※※※※※※※※※※※ 「星谷がいなくなった!?マジか!」 水口は片手に携帯を耳にあてながら靴を履いた。目の前には翼を広げてスタンバっている幸村がいた。直ぐに飛び立てる準備が出来ているという事だと水口には分かった。 「分かった。お前は退治屋といろ!星谷は俺が迎えに行く」 『待って下さい!水ぐ』 水口は乱暴に携帯を切ると壁を殴った。周りにいた神の使いが肩を震わせたが水口には気にしていられなかった。 「行くのか」 「白鷺。気付いたろ?あれ」 やっと姿を現した白鷺に幸村は笑った。白鷺は迷惑そうに溜め息をつき、水口の肩を引き寄せた。 「何すんだ!」 「落ち着け。まじないをかけてやるだけだ」
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